忘れられない夏の日 その1

しあわせな日々

にゃあさんとの日々はいつまでも続くと思っていました。

彼女はわたしの言葉がわかっていると思えるほどききわけが良く、悪さもせずにいつもそばにいてくれる存在だした。

彼女をつれて三度の引っ越しをしましたが、いずれも部屋をキズつけたり粗相することもありませんで。

わたしがPCに向かっていると、ちょこんと足元で丸くなって手が空くのを待つにゃあさん。

部屋を移動すると、しずかについてくるにゃあさん。

毎晩眠るときはしばらく小脇に抱えられ、暑くなると出ていくにゃあさん。

玄関でいつも出迎えてくれるにゃあさん。

そんな彼女にある日異変がおきました。

動物病院

夏のある日、にゃあさん推定12歳。帰宅すると彼女の鼻のふくらみが欠けていました。うっすら血がにじんでいるようにも見えます。動く姿はふつうに見えますが、鼻がきかないようで食欲がありません。

遅かったのでその日は近くの動物病院を調べ、翌朝一番でつれて行きました。

診察してもらうと、どうやら腎臓が悪いのではないかとのこと。猫には避けて通れない問題のように思い、うっすら覚悟します。

その日から、毎日通院して様子をみてもらいます。あまり食べないのでみるみる体力が落ちていき、ペーストの療養食をシリンダーに詰め口に入れますが嫌がります。

医者に夕方も連れてきて欲しいと言われ、毎日朝夕連れて行くことになりました。薬と一緒に療養食も食べさせてもらったり。

にゃあさんはかろうじて水は自分から口にしましたが、自力で動くのもままならないのですべてを1部屋に集め、にゃあさんがなるべく動かなくても済むように、いつでも視界に入るように、一緒にいられるように、しました。

膝のうえ

その日はめずらしくキャリーバッグに入るのを拒んだにゃあさん。

しかたないので布のバッグの底にクッションを入れ、その上ににゃあさんを乗せて動物病院へ行きました。

ほとんど動けないので、帰りはバッグを閉じずに開けていました。

すると、車を運転するわたしの膝ににゃあさんが乗ってきたのです。

わたしはビックリして信号待ちのすきに「危ないからダメだよ。もうすぐ家につくからね」とにゃあさんの 顔が出るように バッグに戻し、頭をなでて運転しました。

帰宅してすぐにバッグからにゃあさんを出し、「さっきはごめんね。もう甘えていいよ」と声をかけましたが、にゃあさんは足を引きずるように部屋の隅へ向かい、倒れこみました。

「ニャアアアー」

苦しそうな声を出して目の視点が合わなくなるにゃあさん。

わたしはかなり大きな声を出していたと思います。

「にゃあ!にゃあさん!」

なにかをつかもうとするように伸ばされた前脚をギュっとにぎり、何度も叫ぶように声をかけました。

力の入っていたにゃあさんの前脚から力が抜け、ゆっくりと瞳孔が開くのを見て、わたしは泣き崩れました。

一番泣いた日

忘れられない夏の日 その2
一番泣いた日 まだ温かいにゃあさんを抱え、止まらない涙を拭きもせず、わたしは声をかけて彼女をなで続けました。 「苦しかったね。がんばったね。いい子だね」 「ひざの上で甘えたかったのに下ろしてごめんね」 猫ベッドにまあるくなるように寝かせてあ...
猫のこと
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